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国民投票法改正が残した最大の欠陥。「実務整備」で終わらせていい問題じゃない

今日、衆議院憲法審査会で国民投票法改正案が可決された。自民・維新・国民民主・参政の4党が共同提出し、明日の本会議を経て参議院へ送られる見通しだ。

改正の中身は地味だ。投票立会人の選任要件を公選法に準拠させる。FM放送を政府広報に追加する。離島の開票手続きを整備する。2007年の制定から19年、公選法の改正に追いついていない実務的な穴を塞ぐ——それが主な内容だ。「技術的な整備に過ぎない」という推進側の説明は、その限りにおいて正しい。

問題は、盛り込まれなかったものにある。テレビCM・ネット広告・SNS広告への規制が、今回も見送られた。

広告規制がなければ、国民投票は資金力の勝負になる

公職選挙法では候補者・政党の選挙運動費用に上限があり、放送時間の購入も原則禁止されている。億単位の資金力があっても、テレビCMを大量に流して特定候補を当選させることはできない。

国民投票には、この制限がない。

改憲派・護憲派どちらの立場であれ、巨額の広告費を投じてテレビ・ネット・SNSを飽和させることが現行制度では合法だ。資金力に大きな差があれば、国民投票の結果が「国民の意思」ではなく「広告到達量の差」を反映するリスクが生まれる。これは改憲の賛否より前に問われるべき、手続きの公正性の問題だ。

「後で検討」は2021年にも聞いた

広告規制は今回の改正案でも「付帯決議」に押し込まれた。有料広告の制限やインターネットの適正利用の確保について「速やかに検討を加えた上で、必要な法制上の措置を講じる」という文言だ。

付帯決議に法的拘束力はない。政府が無視しても違法ではなく、期限も罰則もない。

しかも、似たことは2021年の国民投票法改正でもすでに起きている。あのときは付帯決議よりもむしろ一歩強く、法律の附則そのものに「施行後3年をめどに検討を加え、必要な法制上の措置を講じる」と書き込まれた。それでも5年が経った今なお、規制は法制化されていない。法律本文に期限の目安つきで書いてさえ動かなかったものが、拘束力のない付帯決議で動く保証はどこにもない。

今回の付帯決議が前回の附則と違う扱いを受ける根拠は、現時点では何もない。

「表現の自由があるから難しい」という反論は正しいが、十分ではない

広告規制に慎重な側の最も強い主張は「表現の自由との兼ね合いが難しい」というものだ。これは重い論点で、簡単に退けられない。どこまでが「資金力による世論操作」でどこからが「正当な政治的表現」か、線引きは本当に難しい。ネット広告・SNS規制は技術的にも複雑で、諸外国の制度設計も試行錯誤が続いている。

「合意できる実務整備を先に進めて、難しい議論は別立てで」という考え方も、立法論として筋は通る。

でも、憲法改正は選挙とは違う。

選挙なら4年後にやり直せる。政策が間違えば次の政権が変えられる。しかし憲法は一度変われば、次の改正がいつになるかわからない。手続き法が整うことで改憲発議が現実味を帯びてくるとき、広告規制のない国民投票が先に来るリスクは十分にある。急ぎたい側がそのタイミングを選ぶことだってできる。

付帯決議に立法スケジュールをつけるべきだった

私が言いたいのは、広告規制の答えは一つだということではない。表現の自由との兼ね合いは真剣に議論する価値がある。

ただ、「後で検討する」と言うなら、「いつまでに、どんな法案を、誰が提出するか」を明示すべきだった。2021年のように「3年をめど」と附則に目安を書くだけでは足りない。広告規制法案の提出時期を具体的に定める、あるいは規制法案の成立を国民投票の実施要件とする——そういう担保があってはじめて「段階的立法」は信頼できる。

それがないまま手続き法だけが整備され、参院での可決が近づいている。2021年の繰り返しを防ぐ仕組みが今回もなかったことに、もっと議論が集まってよかった。

出典一覧


本記事は2026年6月18日の衆院憲法審査会可決を受けて執筆したものです。制度の解釈・評価は筆者の見解です。

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国民投票法改正で何が変わって、どんな課題が残ったの?CM規制の論点も教えて

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