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「責任ある積極財政」は、日銀1%利上げで看板倒れになる。骨太方針に書くべき一行

先週、日銀が政策金利を1%に上げました。1995年以来、31年ぶりの水準だそうです。同じ週、Xでは「高市倒産」という言葉が流れていました。住宅ローンの金利が上がる、中小企業の借入負担が増える――そういう不安の声です。

一方で政権は「責任ある積極財政」を掲げ、骨太の方針2026を7月にまとめようとしています。投資を増やして経済を強くする、という方向です。

この二つを並べると、ひとつ疑問が出てきます。お金を借りるコストが上がっているのに、借りて使う側はアクセルを踏み続けて大丈夫なのか、ということです。

**「責任ある積極財政」と言うなら、その「責任ある」の中身を、骨太の方針2026に数字で書くべきです。**具体的には、金利上昇で増える利払い費の分を、他の歳出を抑えて吸収するというルール(ペイアズユーゴー的な歳出の上限)を一行入れる。それがないなら、「責任ある」は飾りの言葉になります。これは緊縮しろという話ではありません。後で詳しく書きます。

私は積極財政そのものに反対ではありません。デフレ下で財政を絞るのは間違いだと思っています。ただ、金利が上がった局面では話の前提が変わる。その変化を直視しないまま昨日と同じ標語を続けることに、引っかかっているのです。

まず事実 ― 利上げと、膨らむ利払い費

日銀は2026年6月15・16日の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%から1%程度へ引き上げました。植田総裁が入院中のため氷見野副総裁が議長を務め、8人の政策委員のうち7人が賛成、浅田委員が反対という結果でした(日本経済新聞)。賃上げが3年連続で高水準になり、「賃金と物価の好循環」が続いていることが理由とされています。

問題は、この「金利のある世界」が国の財布に効いてくることです。

2026年度予算で、国債費は31兆2758億円。初めて30兆円を超え、6年連続で過去最大を更新しました。このうち利払い費は13兆371億円です(nippon.com)。利払い費の計算に使う「想定金利」は、前年度の2.0%から3.0%へ引き上げられました。この引き上げだけで、利払い費は約2兆5000億円増えています(日本経済新聞)。国債の発行残高は2026年度末で1145兆円に達する見通しです。

そして、ここが一番効く数字です。財務省の試算では、金利がさらに1%上振れすると、2035年度の利払い費は45.2兆円になる。2026年度のおよそ3.5倍です(日本経済新聞)。

借金そのものは昨日と同じでも、金利が動くだけで利払いは雪だるま式に増える。利上げは、それを現実の方向へ一歩進めた、ということです。

「責任ある積極財政」とは何を約束した言葉なのか

では政権が掲げる「責任ある積極財政」とは何か。

骨太の方針2026は高市内閣にとって初の骨太で、7月のとりまとめが見込まれています(CIVIC AI)。経済財政諮問会議の民間議員資料では、「責任ある積極財政」を、戦略的な財政支出と行財政改革を同時に進めるもの、と説明しています。注目すべきは、その中に**「将来の利払い費の増加を考慮した中期の財政計画」**や、確率論的な債務持続性分析(SDSA)といった言葉が入っていることです(オルインWEB)。

つまり、利払い費が増えること自体は、政権側の資料も認めている。「責任ある」という形容詞は、まさにそこに歯止めをかける、という約束のはずなのです。

だとすれば話は単純です。約束したのなら、書けばいい。中期計画でいつか考える、ではなく、今年の骨太に「利払い費が増えた分は他の歳出で吸収する」という数字のルールを書く。約束を文章にして初めて、「責任ある」は検証できる言葉になります。SDSAという分析の名前だけが並んで、歳出の上限が書かれていないなら、それは責任の外注です。

反対意見 ― 「成長で返せばいい。利払いを恐れて絞るほうが愚かだ」

ここで、積極財政派の最も強い反論に向き合います。私が見るかぎり、これは一定の説得力を持つ議論です。

彼らはこう言うでしょう。「財政の健全性は、借金の絶対額や利払いの大きさで測るものではない。名目GDPに対する債務の比率で見るべきだ。金利(r)より経済成長率(g)が高ければ、たとえ借金を増やしても債務比率は下がっていく。だから今やるべきは、利払いに怯えて支出を絞ることではなく、投資で成長率を引き上げることだ。むしろ歳出を機械的に縛れば、デフレに逆戻りして税収が減り、かえって財政は悪化する。緊縮こそが無責任なのだ」と。

これは藁人形ではありません。実際、日本はこの十数年、金利が成長率を下回る局面が続き、それが積極財政を支えてきました。利上げ反対派の「国内投資こそが本当の円安対策であり成長の源だ」という主張も、この延長線上にあります。賃上げが3年続いている今、ここで腰折れさせたくない、という危機感も理解できます。

それでも ― 「成長に賭ける」だけでは「責任ある」と呼べない

その上で、なぜ私が歳出ルールを書くべきだと考えるか。

第一に、前提が変わったからです。金利が成長率を下回る、という積極財政の土台は、まさに今ぐらついています。日銀は1%まで利上げし、予算の想定金利はすでに3%。「rがgを下回り続ける」という賭けに、以前ほどの分はありません。賭けが外れたときに何が起きるかは、財務省の試算が示しています。金利1%上振れで利払い45兆円。これは社会保障や教育に回せたはずのお金です。

第二に、コストが非対称だからです。成長に賭けて当たれば、債務比率は緩やかに下がる。外れれば、利払いが他の予算を食いつぶす。当たりの利益は小さく緩やかで、外れの損失は大きく速い。この非対称な賭けに、保険をかけずに全額を張るのは、勇気ではなく無防備です。

そして大事なのは、ここで問われているのが「緊縮か、積極財政か」の二択ではないことです。第三の道があります。投資は続ける。ただし、金利上昇で増える利払い費の分だけは、他の歳出の見直しで埋める。成長戦略のアクセルと、利払い増を吸収するブレーキを、同じ一枚の紙に書く。これは積極財政をやめろという話ではなく、積極財政を長く続けられる形にしろ、という話です。実際、政権の民間議員資料も「新たな投資枠というアクセルと、歳出改革というブレーキ」という言い方をしています。であれば、そのブレーキの踏み具合を数字で書けばいい。

着地 ― 7月の骨太に、検証できる一行を

私の主張は一つです。骨太の方針2026に、「金利上昇で増えた利払い費は、原則として他の歳出の抑制で吸収する」という趣旨の、検証可能なルールを書き込むこと。SDSAで分析します、中期計画で考慮します、という将来形の言葉ではなく、今年の予算編成から効く一行を入れることです。

それが入っていれば、「責任ある積極財政」は本物の約束になります。入っていなければ、利上げで重くなった利払いを横目に投資だけ膨らませる、ただの積極財政です。看板から「責任ある」を外したほうが、まだ誠実でしょう。

7月、骨太の方針2026が出ます。読むべきは美しい成長戦略の部分ではありません。利払い費という地味な数字に、政権がどんな歯止めの言葉を添えたか。そこだけを見れば、この標語が約束だったのか、飾りだったのかが分かります。


本記事の事実部分は2026年6月21日時点の公開情報に基づきます。利上げの決定、予算の数字、財務省の試算は出典のとおりの事実です。それらをどう評価するか(「責任ある」の中身を骨太に書くべきだ、賭けが非対称だ、など)は筆者の意見であり、異なる見方があり得ます。

出典

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国会会議録・法令・統計データをもとに、気になる疑問に出典つきでお答えします。

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