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副首都法案、防災と分権には賛成。でも「大阪都構想」を束ねた設計が躓きの石です

6月24日に出てきた法案の中身

自民党と日本維新の会が6月24日、副首都を創設するための法案を衆院に提出しました。連立政権の合意に沿って、7月17日の会期末までの成立を目指しています。

法案は副首都の役割を二つ挙げています。一つは大規模災害で東京の首都機能が止まったときに、それを代替すること。もう一つは「多極分散型経済圏形成の中核」になること。首相を本部長とする推進本部を置き、担当大臣のポストも新しく作る。ここまでは、国のリスク分散と地方分権の話です。

ところが法案の付則には、別の仕掛けが入っています。東京23区のような「特別区」を設けるための大都市地域特別区設置法の改正です。副首都に指定された地域は名称を「都」に変えられる。そして特別区の設置と名称変更、副首都の指定を一体でやろうとする場合の住民投票の段取りまで書いてある。これはどう読んでも、維新が二度の住民投票で否決された「大阪都構想」を、三度目に持ち込むための土台です。

防災と分権という大義には、私も乗ります

東京への一極集中は、ずっと前から指摘されてきた弱点です。人も企業も官庁も、一つの平野に積み上がっている。直下型地震が来れば、政治も経済も同時に止まる。野村総合研究所の木内登英氏も、一極集中の是正は東京の過密と地方の過疎を同時にやわらげ、国全体の生産性を上げうる成長戦略だと整理しています。

中央集権を見直して地方に権限を返すという方向も、リベラルの専売特許ではありません。むしろ国のかたちを長い目で立て直す、保守的な国土強靱化の発想です。災害に強く、東京が倒れても日本が止まらない仕組みを持つ。これは多くの国民が頷ける話のはずです。だから、副首都という発想そのものを否定するつもりはありません。

「まず器を」という賛成論には、芯がある

この法案に賛成する側は、こう言います。大阪は新幹線も国際空港も大学も企業も揃った、東京の代替地として最も現実的な都市だ。器を先に法律で用意しなければ、機能の移転はいつまでも進まない。特別区という強い行政体を作っておくことは、副首都を機能させる前提条件であって、都構想とセットになるのは理にかなっている。災害は待ってくれないのだから、整った順から決めていけばいい。

この言い分には、芯があります。実際、首都機能移転は平成の昔から議論だけが続き、何も動かないまま30年が過ぎました。「まず器を」という焦りには、それなりの根拠がある。ここを軽く見て、都構想叩きに話をすり替えるのはフェアではないと思います。

それでも、中身を示す順番が逆です

今回の設計は、順番が逆です。副首都というなら、まず中身を示すべきでした。どの省庁の、どの機能を、いつ、いくらかけて大阪へ移すのか。木内氏が紹介する国土交通省の古い試算では、首都機能の移転には4.0兆円から7.5兆円という幅が出ています。これは副首都構想そのものの数字ではなく、あくまで参考値です。それでも、桁が兆円であることは動きません。これだけの公費を動かす話で、移す機能のリストも、年限も、総額も法案に書かれていない。書いてあるのは、住民投票の手続きのほうなのです。

器が先か中身が先かという議論はありえます。でも、中身が一行もないまま「都」への改名の段取りだけが整っているなら、それは副首都の法案というより、大阪都構想の再挑戦に防災と分権の看板を掛けたもの、と読まれても仕方がありません。

実際、当初案には大阪都構想の賛否を「大阪府全域」の住民投票で問えるという規定がありました。大阪市を廃止するかどうかを、市の外に住む府民が決める。これは地方自治を定めた憲法92条に反するという指摘が出て、高市首相が6月22日に吉村代表へ削除を求め、自民が23日、維新が24日に修正を了承しました。府全域投票という無理筋が消えたこと自体は、まっとうな判断です。住民の自己決定を、外側の多数で上書きしてはいけない。

ただ、この一点が直っても、根っこは残ります。副首都の指定と特別区の設置を一本のレールに乗せた構造は、そのままだからです。

では、どうすべきか

二つに分けるべきです。

一つ目の法律で、副首都の中身を決める。代替する機能の範囲、移転の年限、総額と財源、効果の検証の仕方。これを国会と国民に対して、数字で示す。災害対応と分権という大義は、ここでこそ正面から語れます。器の名前を「都」にするかどうかは、その後の話です。

二つ目に、大阪都構想は大阪の問題として、大阪市民が決める。過去二度の住民投票で示された民意を、国の副首都法案に相乗りさせて三度目を狙う形は、たとえ目的が正しくても、手続きとしてきれいではありません。分けて問えば、賛否はそれぞれの土俵で正直に出ます。

東京が倒れても日本が止まらない。その備えには、私は賛成です。だからこそ、副首都の中身を空欄にしたまま住民投票の段取りから書き始めた今の法案は、惜しい。会期末まで時間はわずかです。せめて、移す機能と総額の見通しくらいは、採決の前に国民の前へ出してほしいと思います。器の名前を決めるのは、それからでも遅くありません。


出典

法案の内容(副首都の役割、推進本部・担当相の新設、特別区設置法改正を付則に置いたこと、「都」への名称変更、住民投票規定の修正、提出日、会期末までの成立方針)と、修正協議の経緯(高市首相と吉村代表の6月22日会談、府全域投票の削除、憲法92条をめぐる指摘、自民6月23日・維新6月24日の了承)は、以下の報道に基づきます。費用の数値は1997年の国土交通省試算を引いた民間の参考値であり、副首都構想そのものの確定費用ではありません。本法案は審議中で、今後内容が変わりうることをお断りします。社説・論説は「事実」ではなく別の意見として扱いました。

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副首都法案の「副首都指定」と「大阪都構想(特別区設置)」を切り離した場合と、一体で進めた場合で、防災・行政効率・財政コストにどう差が出るかを比較して

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