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ガソリン補助金は出口を決めて畳むべきだ。暫定税率を廃止した年に、また価格を税金で抑える矛盾

2025年12月31日、ガソリンの旧暫定税率が廃止されました。1リットルあたり25.1円。「当分の間」と呼ばれながら、半世紀近く居座った上乗せです。やっと終わった、と思った人も多いはずです。

それが、半年後のいま。私たちはまた補助金でガソリン価格を抑えています。税で上乗せした分を畳んだそばから、別の財布から税を注いで価格を押し下げる。何かがおかしいと感じるなら、その勘は正しいと思います。

まず、確かな経緯から

ガソリンへの上乗せ課税は1974年、第一次オイルショックの財源対策として「暫定」の名で始まりました。2010年度の税制改正で「当分の間税率」と看板を掛け替え、そのまま生き延びます。1リットル25.1円。軽油には17.1円。臨時のはずの税が、約50年も常設されてきたわけです。

これがようやく動いたのが昨年でした。ガソリンの旧暫定税率は2025年12月31日に廃止。軽油引取税の暫定税率も2026年4月1日に廃止されています(資源エネルギー庁)。廃止で失われる税収は年およそ1.5兆円と試算され、一般的な走行距離の世帯で年約1万2000円の負担軽減につながるとされました(政府試算/解説)。価格を税金でいじる仕組みを、一つ畳んだ。これは小さくない前進でした。

ところが、です。2026年2月末からイラン情勢が緊迫し、ホルムズ海峡の通航リスクが高まって原油が急騰します。全国平均のガソリン価格が170円を超える見込みになったため、政府は3月19日から「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」として補助を再開しました(資源エネルギー庁特設サイト)。仕組みは、全国平均が170円程度を超える見込みになったら、170円を超えた分を補助で押し下げるというもの。軽油・重油・灯油も同額、航空機燃料はその4割を補助します。

補助単価はその後、価格の落ち着きとともに縮小してきました。2026年6月25日時点では1リットル6円で、6週連続の縮小です(補助金ポータル)。それでも7月は、ホルムズ海峡を避けた割高な代替調達のコストが反映され、1リットル4.9円が支給される見通しと報じられています(日本経済新聞)。そして肝心なのは、この措置に明確な終了日が設定されていないことです。

ここまでが事実です。ここから先は、私の意見だとはっきり書きます。

補助金そのものを否定はしません

原油高は理屈ではなく家計を直撃します。ガソリンが170円を超えれば、地方で車に頼って暮らす世帯ほど効きます。運送や農業のコストに跳ね返り、巡り巡って食品の値段にも乗る。減税は法改正と国会の時間が要るのに対し、補助金は明日からでも価格を下げられる。ホルムズ海峡のリスクは演出ではなく現実で、調達コストの上振れも本物です。だから「緊急の激変緩和」としての補助には、意味がある。ここは認めます。

実際、価格が動いた局面で機動的に痛みを和らげる手段を、政府が一つも持たないほうが危うい。補助金を頭から「ばらまき」と切り捨てる論は、現場の困りごとを軽く見ているとも思います。

それでも、出口のない補助は別の話です

問題は、補助という手段そのものではありません。出口を決めずに常態化させることです。

思い出してほしいのが、まさに今年畳んだばかりの「当分の間税率」です。あれも最初は「暫定」でした。緊急の名目で始まったものが、終わりの基準を持たないまま50年居座った。価格や税収に関わる仕組みは、いったん回り出すと、それに依存する予算や事業や政治の都合がぶら下がって、止められなくなる。私たちはその実例を、つい半年前に見送ったばかりのはずです。

今回の補助には、発動の基準があります。「全国平均170円超」という、わかりやすい数字です。なのに終了の基準がない。「中東情勢が落ち着くまで」では、誰がいつ落ち着いたと判断するのかが曖昧で、結局は時々の政治判断に委ねられます。発動はこんなに明快なのに、出口だけが霧の中。これでは、また同じことを繰り返します。

しかも補助金は、税率の引き下げと違って見えにくい。元売りを通じて卸価格に効くので、消費者は自分がいくら税で支えられているのか実感しにくいんです。価格が下がれば歓迎されるけれど、その原資は税。負担と受益の関係がぼやけたまま、規模だけが情勢次第で膨らんでいく。価格が本当はいくらなのかという市場の信号も、補助で薄まります。財政規律と価格シグナルの両方を、少しずつ削っていく構図です。

それに、忘れてはいけない順番があります。暫定税率を廃止したのは、価格を税でいじる発想から降りる、という判断だったはずです。その判断をした政府が、舌の根も乾かぬうちに別の補助で価格をいじり始めれば、廃止の意味が中和されてしまう。やったことと、やっていることが、逆を向いている。

ではどうすべきか

「注視したい」で終わらせる気はありません。具体的に三つ、言い切ります。

一つ。今回の中東対応の補助には、発動と同じ明快さで「終了の数値基準」を付けること。たとえば全国平均が一定額を一定週間下回ったら自動で終了する、というように、政治の裁量ではなく数字で畳めるようにする。入口に170円という線を引けたのなら、出口にも線を引けるはずです。

二つ。期限を区切るサンセット条項を制度に書き込むこと。延長したいなら、その都度あらためて国会で理由を説明し、採決で問い直す。延長が当たり前の更新作業になった瞬間に、それは「当分の間」の再来です。期限を切るだけで、惰性は断てます。

三つ。恒久的な備えは、補助金ではなく価格連動の減税ルールへ一本化すること。原油が一定水準を超えたら自動で税を軽くし、下がったら戻す。かつてのトリガー条項のような、ルールで動く仕組みです。人の判断で出したり止めたりする補助金より、ルールのほうが透明で、依存も生みにくい。

家計を守る必要は、私も否定しません。守り方の問題です。価格を税金で抑えるなら、いつ抑え、いつやめるのかを、最初に数字と期限で縛る。それをしないまま「緊急」を続ければ、私たちはまた半世紀後の誰かに、名前を変えただけの「当分の間」を押し付けることになります。50年かけてようやく一つ畳んだのに、その年のうちに二つ目を建ててどうするのか。畳むときの設計図を、補助を出すいま、同時に描いておくべきです。


出典

※本文中の事実(廃止日・金額・経緯)は上記の出典に基づきます。発動基準と同じ明快さで終了基準・期限を定めるべきだという評価、価格連動の減税ルールへ一本化すべきだという提案は、筆者の意見です。

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ガソリンの旧暫定税率廃止と補助金復活の経緯を、財政・価格政策の観点から賛否それぞれの根拠とあわせて整理して

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