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国会議員の所得3003万円。「半額にしろ」が的を外している理由

6月30日、衆参両院が2025年分の議員所得を公開しました。471人の平均は3003万円。前年より490万円増え、2年ぶりのプラスです。最高は自民党の中西健治議員で11億4015万円。1億円を超えた議員は前回の4人から7人に増えました。高市早苗首相は3641万円で29位でした。

数字が出た直後、Xのタイムラインは「増税ばかり進めておいて高すぎる」「半分にしろ」で埋まりました。気持ちはわかります。物価が上がり、社会保険料の負担が重くなるなかで、政治家だけが所得を増やしている。

でも、この3003万円という数字は、そのまま「議員の給料」ではありません。

平均を吊り上げているのは、ほんの数人です

所得公開の対象は、前年に議員が得たすべての所得です。歳費(税金から出る報酬)だけでなく、株の配当、不動産収入、著書の印税、相続がらみの譲渡益まで含まれます。だから資産家の議員が一人いるだけで、平均はぐっと持ち上がります。

計算してみます。最高額の中西議員の11億4015万円は、それ一人で471人の平均を約242万円押し上げています。1億円超えが7人。この上澄みを外していくと、残りの大多数がいる水準は、平均の3003万円よりずっと低いところに沈みます。中央値を取れば、おそらく歳費に毛が生えた程度でしょう。

その歳費はいくらか。歳費法で月額129万4000円と決まっています。ただしコロナ以降の2割削減がいまも続いていて、2026年7月末までは月およそ25万9000円が引かれています。期末手当を足しても、年収ベースで2000万円台の前半。しかも与党が検討した「月5万円増」は、昨年末に見送られました。

つまり、大金持ち議員を別にすれば、多くの議員が実際に手にしているのは、すでに一度削られた給料です。そこへ「3003万円は高すぎる、半額にしろ」とぶつけても、狙った的には当たりません。当たるのは、平均を吊り上げた張本人ではなく、平均以下で働いている議員のほうです。

「給料=悪」という前提を、いったん疑います

ここで反対の声にも正面から向き合っておきます。元衆院議員の宮崎謙介氏は、この報道に対して「議員の給与=悪という考えはよくない」と述べています。議員報酬を下げれば下げるほど、生活に余裕のある資産家しか政治家になれなくなる。会社員が仕事を辞めて挑戦するにはリスクが高すぎる。結果として、庶民の感覚を持った代表が議会から消えていく——という主張です。

これは、軽く笑い飛ばせる理屈ではありません。むしろ核心を突いています。政治家の報酬を叩けば叩くほど、政治は金持ちの道楽に近づく。だとすれば、報酬の「額」を下げることを改革のゴールに据えるのは、方向を間違えているのかもしれません。

私も、議員がまともな報酬を受け取ること自体には反対しません。反対なのは、報酬とは別枠で、見えにくいところに積まれた特権のほうです。

削るなら、まず「見えないお金」からです

議員には歳費のほかに、調査研究広報滞在費——かつての文書通信交通滞在費が、非課税で月100万円支給されます。年1200万円。所得公開の3003万円には、この分は入っていません。

この旧文通費は長く「第二の給料」と批判され、使い道も残額の返還義務もないまま放置されてきました。ようやく2025年8月1日施行の改正で、1万円を超える支出は使途を報告してネットで3年間公開し、残額は返す、という仕組みが入りました。前進です。ただ、資金管理団体への寄付を認めるなど、抜け道の指摘は残ります。

問題は旧文通費だけではありません。所得公開の制度そのものにも穴があります。対象は議員本人の所得に限られ、配偶者や家族の名義に移した資産は表に出ません。公開しても、肝心のところが見えない設計になっているのです。

さらに政党には、税金を原資とする政党交付金が別に配られます。個々の議員の所得票には現れませんが、政治に流れる公金という意味では、歳費よりよほど額が大きい。

こうして並べると、順番が見えてきます。いま一番透明で、すでに2割削られているのが歳費です。逆に、いちばん見えにくく、手つかずに近いのが旧文通費の使途であり、公開制度の抜け穴であり、交付金の使われ方です。それなのに世論の火力は、いちばん見えている歳費に集中している。これでは、削りやすいところだけが削られて、本丸は温存されます。

「身を切る改革」の見せ方に、ひとつ注文をつけます

いま国会では、自民と維新が衆院比例代表を45議席削る定数削減を「身を切る改革」と呼んで進めています。私は、税金の使われ方に厳しくあれという、その保守的な問題意識そのものは支持します。政治家が公金でぬくぬくしていいわけがない。ここは譲りません。

だからこそ、看板と中身のずれが気になります。議席を削る、給料を削る——数えやすくて、見出しになりやすいものばかりが「身を切る」と称される。一方で、非課税の月100万円の中身や、家族名義に逃がせる資産や、交付金の使途といった、数字にしにくく調べにくいものは後回しになる。削減の「痛み」を演出することと、公金の無駄を実際に減らすことは、同じではありません。

3003万円という数字に怒るのは、健全な感覚だと思います。ただ、その怒りを「半額にしろ」で消費してしまうのは、もったいない。半額にしても、平均を吊り上げた資産家議員はほとんど痛まず、庶民出身の議員だけが政治から遠のくだけです。

向けるべきは、額ではなく、透明性です。旧文通費の領収書を一円残らず公開させること。家族名義の資産まで所得公開の対象に含めること。政党交付金の使途を、旧文通費と同じ水準で開示させること。次に「身を切る改革」という言葉を聞いたら、切っているのが見えやすい歳費なのか、それとも見えにくい特権なのかを、まず確かめてください。切る順番こそが、改革が本物かどうかを分けます。


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